Michi-Ken
紙の檻
1.基本情報
舞台:現代日本(クローズド)
推奨人数:2~3人
プレイ時間目安:オンセで2時間程度
必須技能:<写真術>
推奨技能:基本探索技能、<回避><精神分析>
準推奨技能:気持ちばかりの戦闘技能、<英語>
2.あらすじ
探索者は眩しい光を最後に意識を手放した。
そして再び目を覚ました時、眼前に広がるのは見慣れぬ空間と漠然とした悪意だった。
3.シナリオ背景
湯田隆(NPC)はかつて信頼を寄せていた人物から裏切られ地位を失った過去があり、それ以来彼は「所詮人の良心なんて上っ面の綺麗事だ」と考えるようになった。
そんな時、湯田は「グラーキの黙示録ⅩⅡ」を手にとってしまい、イゴーロナクの依り代として復讐と悪意に突き動かされるようになってしまった。
「写真を撮ると魂を抜かれ死んでしまう」といういわくに興味を持っていたこともあり、イゴーロナクはそれを利用して魂を写真に閉じ込めてしまう力をカメラに授け、湯田に使わせた。
探索する空間は湯田の精神世界と写真の中の空間を足して2で割ったようなもの。
4.ステータス情報
・NPC
湯田 隆(28) ―悪意に魅入られた男―
職業:カメラマン
STR11 CON13 DEX13 POW10 APP14 SIZ12 INT13 EDU14
耐久13 SAN50 MP10
<目星>70%、<聞き耳>60%、<写真術>75%、
<回避>50%、<こぶし>50%、<英語>50%
②の部屋で出会うキーパーソン。
シナリオ開始の時点で既にイゴーロナクの依り代になっている。
・神話生物
イゴーロナク
STR25 CON125 SIZ25 INT30 POW28 DEX14
耐久75 移動10
武器:タッチ(自動成功):POW*5に失敗すると1ラウンドごとにPOWとINTが1減少(回復不可)
貪り食う(自動成功):1d4のダメージ(回復不可)
イゴーロナクの名前を知っている人間のみを襲う。名前を知っている探索者が複数人いる場合は貪り食う。
・人間からイゴーロナクに変身したとき:SANC 1/1d20
・イゴーロナクを目撃したとき :SANC 1/1d10+1
※2d3+5ターン後に湯田は完全にイゴーロナクに変身してしまう
・⑤の部屋で見つけるポラロイドカメラ
見た目も機構も何の変哲もないカメラだがイゴーロナクの力が宿っている謎のカメラ。発見当初は全く動かないが、戦闘開始より1d3ターン後に作動するようになる。
<写真術>に成功したのち被写体のPOWと対抗ロールを行い、2ターンの間戦闘不能にならない限り被写体の魂を写真に封じ込めることができる。
現像し終わるまでに印画紙を破ると一からやり直しになる。
被写体はこのカメラのレンズを向けられた途端、とてつもなく嫌な予感がする。(PvPになりそうなときにこの描写をする)
5.導入
探索者(達)は仕事などの帰りに人気のない道を歩いている。
すると突然「すみません、あなたの写真を取らせてもらえませんか?」と声をかけられる。
そして探索者の答えを待たずに声の主はストロボをたきながら写真を撮る。
あまりの眩しさに目を瞑ったところで意識が暗転する。
※探索を始める前に理由を告げずに探索者にオープンで1d100を振らせてください。一番出目が高かった探索者は、後述するロールに自動成功することになります。

6.①の部屋

探索者が目を開けると其処は窓のない正方形の部屋であり、その中心で倒れている。
床には大量の紙切れが床を覆い尽くすほど散乱している。(持ち物はそのまま持っている。時計は普通に動いているが電波は届いていない。)
そして探索者の手にはいつの間にかそれと似たような紙切れが握られていて、それにはこのように書かれている。
「あなたの魂、捕らえるまで少しだけ待ってあげよう」
■紙:片面がつるつるしていることがわかる。
<アイデア><化学><写真術>のうちいずれか成功で、プラスチック樹脂が塗られたようなもの、写真で使われる印画紙(感光紙)であることがわかる。
■ドア:一つだけあり、どうやらここしか進めないようである。木製のドアで鍵などはかかっていない。
<聞き耳>:誰かがいるような気配がする。
7.手に持っていた紙の異変
①から②に移ろうとすると印画紙が突然発熱を始める。紙を見るとうっすら自分の姿が映し出されていることがわかる。
(SANC1/1D4)
8.②の部屋

町の写真屋の撮影スタジオといった感じの部屋。
棚にはトロフィーが飾ってあり、その横には三脚や撮影用の椅子が置いてある。
探索者が部屋に入ると気の弱そうな男が話しかけてくる。
男(湯田)の話によると大体こんな感じ
・自分も気がついたらここにいた。一緒に探索し脱出しよう。
・自分の仕事道具も何処かにやってしまった。
・ここに来るまでの直前の記憶がない。
※探索者が紙を持っているか?などと湯田に質問してきた場合、同じような真っ白の紙を持っていると説明してください。ただこの空間は湯田の深層心理からなる空間なので、探索者と違い、紙に湯田の姿が映ることはありません。
※湯田に部屋の風景に見覚えがあるか聞かれた場合は「自分の職場に似ているかもしれない」と答えてください。
■部屋
・全体に<目星>+<アイデア>:両方成功で写真屋のスタジオにあるべきもの、要はカメラが無いことに気づく。片方成功の場合は何となく違和感を感じるのみ。
・棚に<目星>:トロフィーや賞状には湯田の名前が書かれている。尋ねると彼が過去のコンクールで入賞したときのものだということがわかる。また、懐中電灯を見つけることが出来る。
■ドア:①の部屋にあったもの。<聞き耳>をしても特に何もわからない。
9.③の部屋

■壁の写真
<目星>または<幸運>:写真の中から一枚だけ人物写真を見つける。写っているのは、初老で温和な印象を受ける男性であった。
※この男性は、大学生だった湯田を指導していた教授です。<知識>成功で割と有名な写真家だとわかります。
※湯田に教授の話を聞くと「優しそうな顔の割にはあまり人を褒めてくれるような人じゃない」と答えます。<心理学>に成功すると教授に対して嫌悪感を抱いていると感じます。
■棚
<図書館>:カメラと写真の歴史についての記述がある本を見つける。
『日本にカメラが伝来したのは1841年、江戸時代末期のことである。
日本では昔から、人形など人に似せて造ったものには魂が入りやすい、と言う考えがあり、日本に写真が伝来してきたとき、あまりにもそっくりに写るため魂が抜かれる、と言う迷信すら出ていた。
また、三人で写真を撮ると真ん中の人物がほかの二人よりも鮮明に写り、魂を多く抜かれ死んでしまうとも言われていた。』
■ドア:やや立て付けの悪いドア。鉄製。
④の部屋に移動すると宣言した瞬間、湯田は
「そうだ…現像だ…現像しないと…」といって先に進む。
※この時引っ掴んで止めようとする探索者もいるとは思いますが、否応なしに湯田は突き進みます。間髪入れずに下記の紙の異変の描写を行って妨害して下さい。
※どうしても湯田を同行させる場合、湯田は前述のセリフをブツブツ言うだけで探索者の問いかけに一切反応しません。
10.手に持っていた紙の異変②
湯田を追いかけようと③から④に移る際にPOW*5を行い、失敗した探索者は手足を使った技能(回避/キック/パンチなどの戦闘技能、鍵開けなど手を使わないと出来ない技能)に-5の補正を付ける。それに加え、手に持っていた紙に写っている自分の姿がはっきりし始めていることにも気づく。
11.④の部屋

部屋の構造は同じだが、写真が全て人物を撮ったものになっている。
先に進んだはずの湯田はもういない。振り返っても姿を確認できないだろう。(SANC 1/1D3)
■壁一面の人物写真:気味悪さに0/1のSANチェック
<目星>:笑顔の写真が一つもない、皆苦悶の表情を浮かべている。
<聞き耳>:「ここから出してくれ」「嫌だ死にたくない」等の声が聞こえる。
更に<アイデア>成功でその声の主が写真であることに気付く。(SANC 1d2/1d4)
■本棚
<図書館>:湯田の手記を見つける。目にとまった記述は以下の三つ。
1.人とコミュニケーションをとりながら写真を撮ることがこんなに楽しいことだとは思いもしなかった。
人の「心の底からの笑顔」を写真に収めるということは僕が思っていたよりずっと奥深く、やりがいのあることだったのだ。
これからもっと挑戦してみよう。
2.教授が僕の人物写真を褒めてくれた。
昔からそういうことを言うような人ではないから驚きはしたものの、やっぱり嬉しかった。
今度のコンペにも俄然気合が入る。
3.これは一体どういうことなんだ?
僕の写真が教授の作品として紹介されている。
で、僕はそれを盗作したと?
…まさか教授は最初から僕を貶めるつもりだったのか?
絶対に許さない。
■ドア:鉄の鎖がかけられた鉄製の扉。引き千切るならSTR9との対抗。
12.手に持っていた紙の異変③
④から⑤に移る際にPOW*4を行い、失敗した探索者は手足を使った技能(回避/キック/パンチなどの戦闘技能、鍵開けなど手を使わないと出来ない技能)に-5の補正を付ける。それに加え、手に持っていた紙に写っている自分の姿が更にはっきりし始めていることにも気づく。
13.⑤の部屋

テレビドラマなどで見かけるような現像室。
セーフライトがうすぼんやり赤く光るだけで、部屋の中は真っ暗である。
(②の部屋でライトを見つけていれば補正無し、なければ-30%)
薬品棚と薬品を洗い流すための流し、作業台、机がある。
■流し
<目星>:流しに付いている収納にノートが入っている。これは「グラーキの黙示録ⅩⅡ」の写本の一部分であり、解読には<英語>が必須。
・読むと宣言した時点で正気度を1d3/1d6喪失。
・<英語>成功で目を通した場合クトゥルフ神話技能+3%
この本にはある邪神についての記述があり、1ページでも解読した場合、その邪神の名前は「イゴーロナク」であるということを知ってしまう。
■薬品棚
<薬学>または<写真術>:棚にある薬品は現像でよく使われるものであることがわかる。更に<知識>成功でその中にある「GBX現像定着液」という薬品が有害物質を含むものであることがわかる。
※GBX現像定着液は粘膜や皮膚に触れると強い刺激を受ける薬品です。<投擲>成功でこの薬品の瓶を投げつけ(または薬品をブチまけて)、2d3のダメージを与えることが出来ます。
■作業台
<目星>:カッターが落ちている。(こぶし成功で1d4のダメージを与えることが出来る)
■机
<目星>:机の上にポラロイドカメラ、手記が置いてある。
カメラは何の変哲もないポラロイドカメラだが、紙テープのようなものでぐるぐる巻きにされている。手に取ると心無しか力を奪われるような感覚に陥り、POWが1減少する(POW減少及びそれによるSANCは初めて手に取った時のみで良い)。
その他詳しい情報はKP情報を参考されたし。
■手記
<図書館>:④の部屋にあった物の続きのようである。目に留まるのは以下の四つ。
1.何かしていないとまたふつふつと怒りがこみ上げてくる気がしたので今日は気晴らしに町の図書館に行った。
そして何気なく手に取ったこの本、全部英語で書かれているけれど、辞書とかを使えばまあ読めなくはないだろう。
というか読まなくてはならない。そんな気がしてならないのだ。
2.友達が出来た。■■■■■という名前らしい。
彼は僕にいろんなことを教えてくれる。
たとえば、写真の撮り方とか。
3.教授の写真を撮って一週間が経った今日、教授が死んだとの知らせを受けた。
友達の言うことは本当だったんだ。
このカメラは人の魂を「抜き取る」。
あの人がこの世からいなくなったと思うと心がとても晴れやかだ。
4.もっとだ。まだ足りない。
もっと とらなくては。もっと。もっと。魂を。
読んだ探索者は自らが置かれている状況を把握してしまい、恐怖を覚える。(SANC 1/1d4+1)
■ドア:ボロボロで錆付いた鉄製のドア。
<聞き耳>:人の気配を感じる。
14.⑥の部屋
殺風景な正方形の部屋。中には湯田がいる。
※この時即座にカメラを使うと宣言された場合は、どんなに弄っても反応が無いと答えてください。カメラが使えるようになるのは湯田が変身し戦闘に入った後からになります。
■部屋
<目星>:ある壁の中心にドアスコープのような小さな穴が開いていることがわかる。
更にそれを覗きこむという宣言の後、目星1/2に成功すると、穴の向こうには同じような正方形の部屋があり、壁一面に首のない太った大男が薄ぼんやり映っていることがわかる。(SANC 1/1d10+1)
湯田に話しかけると、
「友達の名前、漸く思い出したんだ。
何で早くから彼を頼らなかったのか、自分の間抜けっぷりに呆れてしまうよね。
カメラなんて使わずに、最初からこうすればよかったのに。
この手で直接殺せばよかったのにね」と探索者そっちのけで話しはじめる。
<聞き耳>1/2:湯田が小さな声で「イゴーロナク」と呟くのを聞き取ってしまう。
(⑤の部屋にあった「グラーキの黙示録ⅩⅡ」を1ページでも解読した探索者、開始前1d100振って一番出目が高かった探索者は聞き耳自動成功)
直後、湯田の半身は大きく膨れ上がり、手の平に口のある白熱した白い腕が現れる。(SANC 1/1d20)
15.戦闘
・カメラはそれまで全く作動しないが、戦闘開始から1d3ターン後、ぐるぐる巻きになっていたテープがひとりでに剥がれ落ち、突如として作動しはじめる。
・湯田はイゴーロナクに完全に変態してしまうまでに2d3+5ターン必要とする。
それまでは不完全な形態であり、湯田の攻撃も自動成功ではない。
<イゴーロナクと同化し始めた湯田 隆>
STR20 CON40 DEX13 POW10 INT15 SIZ20 耐久30
武器:タッチ 60% (各ラウンド1ずつINTとPOWを消失/回復不能)
貪り食う 70% (1d4ダメージ 回復不能)
イゴーロナクの名前を知っている人間のみを襲う。(複数人いる場合は貪り食う)
(シナリオ開始前に1d100を探索者に振ってもらい、一番出目の高い探索者には必ず襲い掛かるようにする)
【カメラを使う】
一番手っ取り早い対抗策。
<写真術>に成功した後、湯田のPOWと写真術を使用した探索者の現在時点でのPOWで対抗ロールを行い、成功した後2ターンの間気絶ないし死亡しなければ湯田(の魂)を写真に収めることが出来る。
完全に変態してしまうと<写真術>に-20%の補正がかかる。
【普通に戦闘する】
耐久力がやや高いだけで一応倒せなくはない相手である。しかし戦闘に没頭しすぎてターンを消費し、湯田が完全にイゴーロナクと同化した際は勝ち目がなくなるのでそれとなくやめた方がいいのではと誘導するのも手。
16.エンディング
何らかの形で湯田を倒した直後、ここに来る直前のような強い光を浴びる。
眩しさのあまり、再び目を閉じることだろう。
目を覚ますと意識を手放した時の場所に突っ伏して倒れている。
後日、ニュースを見ると…
①湯田を撮影した場合
殺人の容疑で湯田に事情を聞こうとしたところ、湯田が廃人状態で発見されたと報道されていた。湯田は声をかけたりしても反応が全くないようである。それこそ魂を抜かれたように。
②湯田を気絶させた場合(グッドエンド)
湯田が殺人の容疑で逮捕された、と報道されていた。(報道では薬物の投与による毒殺である、とされていた)
③湯田に止めを刺した場合
湯田が自らのスタジオで血まみれになって死んでいたと報道されていた。
17.クリア報酬
クリアした 1d8
湯田を撮影した 1d4
湯田を倒した(=ノックアウトなどで気絶させた) 1d3
湯田に止めを刺した(=耐久力を0以下にした) 1d2
・エンディング分岐②の場合、一応グッドエンドなので、上記のクリア報酬に加えて任意で追加報酬があってもいいかもしれません。
・戦闘で負った永久的な耐久力低下は現実世界に戻ってきたということでクリア後に回復できても問題ありません。